もったいない英語

興味深い動画を見つけました。

オリンピック招致のための英語スピーチの中で、当時の都知事だった猪瀬直樹さんが東京の安全性について英語で言及するというワンシーンがありました。その中で、「東京はものすごくいいところ、あなたが何かなくしものをしても、多くの場合手元に戻ってきます、たとえそれがお金であっても」というようなことをおっしゃったんですね。ほぼ直訳に近い形の英語で。おそらくこれは、日本語の原稿が元にあって、それをもちろん専門家の指導のもと、英語に直してのスピーチだったと思うんですけれども、これがね、なんとも不自然な英語になっているというか。
 
文法や発音の問題ではないんです。猪瀬都知事は、そこらへんの民間人ではなく、あくまで東京都の都知事という立場で「東京はいい場所安全な場所ですよ」って事をアピールしたかったのだと思うんですけれども、そもそも英語ネイティブはこういう話し方をしないわけなんです。
 
何が問題かというと、「東京はいいとこなんですよ、もし落し物をしてもそれがお金であってもね、戻ってくるんですよ」という言い方は日本語としては完璧ですよね。日本人同士だったらその感覚を共有できる。けれどもこれを英語でそのまんまきちんと訳そうとすると、いくつか問題がでてきてしまう。具体的にはまず主語を何にするかによって、誰がそれをそう考えているのかっていう事を明確にしなきゃいけないし、そして動詞の時制をきちんとしてあげないと、文章が成り立たない。いつもそうなのか、時折そうなのか、そうでありたいと思っているのかって。
 
英語ネイティブだって、いつもそんなことを意識して文章を組み立てているわけではないんです。じゃあどうするかっていうと、例えばそういう事を伝えたいなと思ったとしたら、猪瀬都知事がしたように、一般論を語ろうとするのではなくて、メンバーの中で誰か知り合いでお金拾ってもらってうれしかったという経験した人いないかって聞くんです。そしてその経験を話す事によって、一般論にしないで物語るという手法を、英語ネイティブはこういう時にとるんですね。
 
いきなり一般論で話を始めて終わるっていう事は逆にここにすごく負担がきて、ましてや都知事のようなこういう公の立場で発言したら、それは保障してくれるんですか?東京都で?みたいな突っ込みをしたがる人なんかもいるかもしれないので、それを考えたらやっぱりそこで重圧をかけるよりは一つのエピソードをあげて、その彼女が落とした財布が戻ってきてすごい嬉しかった、東京ではそういう事が起きるんですよっていうアプローチであれば、そういったリスクも避けられるんですね。
 
結局、日本語で考えてそれを訳してそして文法的に組み上げてっていうやり方のいきつくところが、通じない英語というか、通じるかもしれないけどちょっとおかしい英語っていう感じになってしまって、私としてもこれだけの立場の方で、おそらくこれを準備するにあたって、まず誰かに訳してもらったでしょうし、スピーチの練習もしたでしょうに、どうしてこういう感じなんだろうと思ってみてたんですけれどもね。
 
ただ、猪瀬さんみたいにあんまり気張らないで本当に等身大の英語を話す事が、正解の場合もあるんですね。ビジネスにおけるプレゼンなんかはその例です。プレゼンが終わるとQ&Aがありますよね。何の準備もなく質問されて、そして準備がなくその場で答えなきゃいけないので、プレゼンはうまくいってもQ&Aの段階で英語力が全部出てしまう。だから、はじめから背伸びしないで、自分のレベルを俺はこのくらいだから加減してくれっていう合図にしてしまうっていう。その後のパーティートークもありますしね。プレゼンの後のちょっとした会合の時にテーブルに寄ってこられてフランクに話かけられても、とってもわからないっていう事が起きるといけないので、あえてあのくらいで意識的にするっていうのも一つの手段かもしれないです。だから周りも特に止めなかったっていうのはあるかもしれませんね。

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